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ホイットマンの詩集『おれにはアメリカの歌声が聴こえる』について書きます。
飯野友幸さんの新訳によるこの詩集は、ホイットマンの『草の葉』という詩集の抄訳で、光文社の古典新訳文庫のなかに入っています。 ホイットマンは、いうまでもなくアメリカの19世紀の詩人で、彼が詩人として出発して間もなく南北戦争が起こり、この戦争の直後にはリンカーン大統領が暗殺されました。訳者によれば「そのような時代の光と影をつぶさに眺め、狂喜したり悲嘆したりしながら詩を書きつづった」といいます。そして今のアメリカの元を辿れば、ホイットマンが体験した19世紀に行きつくといいます。 タイトルにもなっている「おれにはアメリカの歌が聴こえる」は、こんな詩です。 おれにはアメリカの歌声が聴こえる、いろいろな賛歌がおれには聴こえる、 機械工たちの歌、誰もが自分の歌を快活で力強く響けとばかり歌っている、 大工は大工の歌を歌う、板や梁の長さを測りながら、 石工は石工の歌を歌う、仕事へ向かうまえも仕事を終わらせたあとも、 船頭は自分の歌を歌い、甲板員は蒸気船の甲板で唄う、 靴屋はベンチに坐りながら歌い、帽子屋は立ったまま歌う、 木こりの歌、農夫の歌、朝仕事に向かうときも、昼休みにも、夕暮れにも、 母親の、仕事をする若妻の、針仕事の洗濯をする少女の心地よい歌、 誰もが自分たちの歌を歌っている、 昼は昼の歌を歌う--夜は屈強で気のいい若者たちが大声で美しい歌を力強く歌う。 何と牧歌的な、と思いますが、南北戦争の痕跡のただ中にあって、アメリカ人の最も良質な部分を汲み出し、「大工は大工の歌を歌う」と詠んだホイットマンの、やるせないまでのアメリカへの想い、希求を、この詩に感じることができます。 イラク戦争で、死体になって搬送されてくる数が増えれば増えるほど、かつてその若者たちが闊達に歌っていたであろう、大工や、石工や、甲板員の歌が聴こえるようです。 訳は、単調なまでのリフレーンを、原詩がそうであろう力強さで綴っていて、ホイットマンの詩の魅力を、今日のものにしていると思いました。
by sosakujo
| 2008-04-05 04:35
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