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小池創作所代表・小池一三のブログです
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参勤交代(二地域住居)論
この12日に、国交省が主管する「『木の家』づくりから林業再生を考える委員会」が開かれました。今回のテーマは、委員長の養老孟司さんが提唱される「参勤交代論」を、いかに現実のものにするかということで、ぼくは「都市と農山村の往き通いの関係をつくる「田園ハウス(仮称)」という案を提起しました。
かなり長いけれど、そのメモを記すと、こんな内容です。

都市は、便利であり、経済があり、情報があり、文明があり、雇用の場があり、磁力がある。
けれども、今や都市文明の行き詰まりは明らかで、それを救うのは、都市住民が農山村へ「参勤交代」するのがいいという養老委員長の「論」に賛成。

さて、それをどう現実のものにするか。
「参勤交代」の往き通いのあり方=1年に3カ月なのか、週末ごとになのか。両方ありでいいのでは。いずれの場合も、住まい(根拠地)を持つ必要が生じる。ルームシェアが都会で広がりつつあり、一世帯だけでなく、複数世帯(共同購入・持分所有)でもシェア(ハウスと田畑の共同利用)できるようにしたい。

「国元(根拠地)」をどこに求めるか? その人(家族)が置かれた時間によって異なるので、自然の多い遠隔地でも、都市近郊の週末住宅でもいい。
形態=自給自足型の土地でも、整備された農園付住宅でも、大きな農家の間借りでもいい。過疎地の住宅も、都市近郊の団地空き家も増えており、既存住宅(空家・間借り)を積極活用する(改修・改造して利用)。
週末住宅の場合=(首都圏に関して)同心円の中心にスカイツリーを置き、30㌔、65㌔、91㌔で描いてみた。

30㌔の場合=さいたま市、野田市、柏市、我孫子市、千葉市、三鷹市など。65㌔の場合=秦野市、平塚市、丹沢山、熊谷市、館林市、つくば市、土浦市、霞ヶ浦など。房総半島の大部分が圏内。91㌔の場合=小田原を超え、箱根の山のあたり、芦ノ湖の手前まで。大月市、秩父市、伊勢崎市、桐生市。房総半島はすっぽり圏内。那須塩原は圏外だけど、91㌔に入れていい。

首都圏では65㌔~91㌔を超えた地域まで週末住宅の候補地として想定できる。65㌔圏の住宅団地=空家が目立つが、週末住宅としての「自然度」が欠けている。一方、農地や里山が残されている地域は、インフラ整備が遅れている。しかし、開発型のそれは不要と考えてよく、不便であることが価値になるという発想を持ちたい。
65㌔~91㌔圏の地域=これまでは外に行くほどマイナス要素だったが、週末住宅という点では、それがプラスに転じる。
地方都市では30㌔圏内、ところによっては10㌔圏内が対象地域に。

「参勤交代」は、都市文明の価値を捨てることから始まるものなので、「田舎」性、不便さが貴重となる。インフラ整備=上水はともかく、下水については、性能の高い合併浄化槽もあり、その水を池に流して循環利用することも可能。造成されて「塩漬け」になっている土地は、一旦区画整理を壊し、農地や土を盛って小さな里山や池をつくり、ランドスケープを改めればいい。田瀬理夫委員の手法が有効。

ライフスタイル=週末は「田園ハウス」に住み、農作業をしながら自然を満喫し、休みがあけたら収穫物を持って都会のアパートへ。日曜夕方の「収穫市場」は物々交換の場。エコマネーを発行するのもいい。農業は、有機農業家に協力してもらう。

新しい評価軸=里山の有無、自生種の樹木・草花、昆虫、野鳥などの自然度評価を行い、茫々たる造成地には樹や草花を植え、昆虫や野鳥がやってくるようにする。1年ごとにその成果を確認するフィールド調査を義務づける。これらに関心を持てる「意識層」を寄せることで、不動産開発(投機)型でないことを明確にし、新しい生き方・行き方として選んでもらえるようにする。

転用性=「田園ハウス」は、週末住宅であると共に、大地震の際には自給自足の疎開住宅(防災都市構想の一環)になり、また離職後の「終の住処」にもなる。環境共生型住宅・防災住宅でもある。

建物の基本要件=長期優良住宅であること・低コストであること・近くの山の木を利用すること・自然エネルギー(自給自足度指標)を利用することなどを基本要件とする。

住宅のイメージ=フランク・ロイド・ライトの「プレーリーハウス」の現代版。おおらかな表情を持った、屋根の水平線がきれいな平屋(or大屋根2階建)を基本とする。上に延びる都市型住宅のアンチテーゼとして有効。

ポイント① 既存住宅のストック活用、新規に建てる場合共に、住宅ローンの制度化が重要。現在の住宅金融支援機構の証券化支援事業に明記された「セカンドハウスも可」を、正式の制度「田園住宅ローン」(仮称)に出来ないか?若い人に「これならやれる」と思ってもらえることが大事。
ポイント② 税制面でも優遇措置をとれないか?
ポイント③ 首都圏では65㌔~91㌔だが、地方都市では10㌔程度で郊外に。市街化調整区域の土地があったりする。新制度の主旨に沿えば、その緩和措置は可能か?
ポイント④ 「成長戦略」「休暇分散化」「高速道路無料化」をこの文脈において捉える。
ポイント⑤ 田園ハウスを支援する地方公共団体やMPO等の「新しい公共」が、空家になった既存住宅を買い取ったり、「塩漬け」になった造成団地を買い取り、それを定期借家・借地で提供できるようにする。
ポイント⑥ 優良「田園住宅」制度を、この内容に沿って改善・改編できないか。現在の優良「田園住宅」制度=敷地面積の最低規模(法第1条関係)300㎡/建ぺい率の最高限度(法第1条関係)10分の3/容積率の最高限度(法第2条関係)10分の5/階数の最高限度(法第3条関係)3階(地階を含む)自然遊住型/自然環境豊かな山里での自然と同化した生活を送ろうとする要請に応える住宅。退職ライフ型/退職後の老後生活を豊かな環境の下で送りたいという要請に応える住宅。田園通勤型/田園居住を享受しつつ田園地域から都市の職場に通勤。UJIターン型/都市部から地方部へのUJIターンの要請に応える住宅。
ポイント⑦ 本委員会の主旨に立ち、「山・森」の「出口」戦略として捉える。
ポイント⑧ 当初、島根県の高津川流域の地域を報告したいと考えたのは、地域の景観問題。よき地域景観をどう守るか。くどくなるが、田舎を都市化しないこと。
ポイント⑨ 「参勤交代論」という言葉はおもしろいけど、政府が用いると中央集権的なイメージになる。とりあえず「田園ハウス」としたが、いいネーミングはないか。

ざらっとこんなふうです。
川原誠京大准教授は、これを「移動論」として捉えられました。非常に明快で、慧眼だと思いました。移動することによって得られるのは、子供の教育の場(家族の再確認)であり、食の安全であり、災害時の疎開住宅(都市防災でもある)、定年後の「終の住処」だと思いました。

事例として、ロシアのダーチャが挙げられます。平たくいうと「家庭菜園付住宅」と言えばいいのでしょうか。

この制度の起源は、レーニンの10月ロシア革命(1917年)にさかのぼります。すべての農民に土地を(農民への農地再配分政策)、というスローガンをレーニンは掲げました。レーニンが掲げた「マニフェスト」は、これ以外にも世界を駆けまわり、北欧の「福祉国家」はその産物ですし、フランスの人民戦線によるバカンスも、10月ロシア革命が引き金になりました。
で、農民に土地を、というマニフェストはどうなったかといいますと、コルホーズなど、スターリンの農地集団化政策によって反古にされてしまいます。中国の「人民公社」も失敗しますが、農民を賃金労働者にする政策は愚の骨頂で、果たして農民の不満は大きく、その代償として「自留地」が与えられたのがダートャでした。

1930年代に入ると、政府官僚や芸術家にもダーチャが与えられます。ダーチャとは、ロシア語で与えるを意味する「ダーチ」です。そして、都市住民にも徐々に与えられるようになりました。
このダーチャが威力を発揮したのは、ソビエトの崩壊期でした。職を奪われ、スーパーの前に行列をつくる市民の映像を見ていましたが、餓死した人が続出したという報道は耳にしませんでした。ダーチャがあったからです。そこで土を耕し、食をみずから生むことでロシア人は生き延びたのです。

現在、ロシア人の85%がダーチャを保有しています。ロシアのジャガイモは、中国に続いて世界第二位の生産量を持っていますが、その92%はダーチャで作られています。
食糧難をみずから解決をはかった例としては、ほかに海上封鎖されたキューバの例があります。あれもおもしろい話があり、和訳されていて、2冊ほど持っています。

さて、日本式ダーチャは、食糧難ということも、やがてあるかも知れませんが、現時点では「食の安全」でしょうね。そして、子供の教育の場として目を向けられると思います。
どう政策化するか、「成長戦略」に入れたいという話もあり、案外早いかも知れません。
「びお」でも、しっかり取り上げて行きます。

今日から、今週末まで出張です。
by sosakujo | 2010-04-19 05:07
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