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今回の、「長期優良住宅」は、昨年来言われている「200年住宅」に基づくものです。
肝心の法律に、この言葉は一言も出てこないのが摩訶不思議ですが、「長期優良住宅」とは「200年住宅」をいうというのが、業界の一致した見方です。 では、実際に200年住宅は可能なのか、ということになります。 「長期優良住宅」では、建物の基礎は、鉄筋コンクリートの補強を十分にすることが義務付けられていますが、その鉄筋コンクリート自体、1867年に始まったものです。 フランスの植木鉢をつくる職人が、モルタルの中にたまたま針金を網状にいれたところ、ひび割れの少ない薄い丈夫な鉢ができたというのが、鉄筋コンクリートの始まりです。つまり、140年程度の歴史しか有していないのです。日本では、1890年(明治23年)の横浜港の岸壁工事に用いられたのが最初です。 また、強度が安定しているとされる集成材が実用化されたのは、1901年にドイツのトヘツッアルという大工さんが特許を取ったのが始まりです。日本では、1951年(昭和26年)に東京の森林記念館にアーチ材が用いられたのが最初です。 これらの技術に依らない画期的な工法が生まれたわけでもないのに、どうして200年住宅をいえるのか。余程の自信家か、インチキのどちらかでなければ、そうそう口にのぼらせられるものではありません。かくして国交省は、法律にこの言葉を用いませんでした。200年住宅を言って批判に耐えられるか、という官僚的な判断が働いたのか、見識がそうさせなかったのかは分かりませんが、ともあれ、この言葉は法律から消えました。 しかし、ここに「200年住宅」を正面から掲げ、全国紙2Pを使って広告する企業が現れました。ミサワホームの代表だった三澤千代治さんが始められた「ハビタ」です。 「ハビタ」の広告では、ヨーロッパや日本の民家には有に200年を超える住宅があると喧伝され、その広告に自分たちの住宅写真を載せています。ここでは両者がまったく別のものだと言っていません。 このように、ロジックが繋がらないのにイメージだけを選考させるやり方は、三澤さんたちハウスメーカーがやってきた常套手段です。煙が出ないのにチムニーのある家と宣伝したり、街中の団地に建つのにプレーリーハウス(草原の家)を言ったり、というのと同じではないのか、とぼくなどは思ってしまうのです。 『ホールアース(全地球)カタログ』の編者として知られるスチュワート・ブランドに、 『建物はいかにして学ぶか――建てられたあと何が起きるか』(原題/HOW BUILDINGS LEARN――What happens after they're built) という本があります。 スチュワート・ブランドはこの本のなかで、建物に「6つの層」を置き、その変化の速度を、それぞれの時間的尺度に応じた解決策をとる必要があるする説を立てています。その6つとは、(1)敷地(SITE) (2)構造(STRUCTURE) (3)外装(SKIN) (4)設備(SERVICES) (5)空間設計(SPACE PLAN) (6)家具調度(STUFF) の6つです。 この分類法は、「長期優良住宅」がもとめる、建築と時間の関係を考える上で非常に重要なポイントとなるものと考えられます。 その主旨は、「建物を単に空間的な構造物としてとらえるのではなく、じかんという要素を考えに入れ、この世界に生まれ、様々な成長を遂げ、やがては死に至る存在としてとらえなおす必要がある」(抄訳/村松潔)というものです。 「ハビタ」がいう、長く生き続けた民家や町家は、ここに述べられたようなあり方に沿ったものである筈です。ほんらい200年住宅は、朽ちるにも「6つの層」の段階があり、お手入れしてお手入れして保たれるものであって、そのお手入れ自体、半端な工事費で済まないものです。 「ハビタ」には、そういうものとして、誠実に、正確に200年住宅を伝えて欲しいと思います。
by sosakujo
| 2008-05-31 10:15
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