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小池創作所代表・小池一三のブログです
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病気にならない為の病院
 とうとうなのか、やっとというべきか、今月わたしは還暦を迎えました。
 老人という実感はないけれど、「老人問題」は好むと好まざるにかかわらず向うからやってきます。
 日本の医療費は、現在32兆円ものお金でまかなわれているそうです。
 20年後には、それが56兆円〜69兆円に倍増するといわれていて、その頃には、自分も完全に老人になっているわけだから、さてどうなるものやら、という不安はあります。
 最近、病院に行って気づくことは、患者負担増がここ数年顕著だということです。
財布の中から、結構お金がでていきます。公的保険の範囲は、年々限定されるようになっていて、今後、十分な医療を受けられない層(特に老人層)が膨張するといわれています。そして、その人たちは「乞食患者」と卑称されるようになる、ともいわれています。神経に耐えられない雑言でありますが、多分、そういう現実がやってくるのだと思わなければいけないのでしょうね。
 わたしは今、知り合いの医者が新しい病院をつくるというので、「病気にならないための病院をつくってよ」と言っています。
 病院は、病気になった人が行くところで、風邪を引いたりした急性の疾病は町医者に、大きい病気に罹った人は総合病院に足を運びます。けれども、病気にならないためにはどうしたらいいか、そんな相談に行ける病院はどこにも見当たりません。
 なるほど「健康産業」は盛んです。
 健康食品を常用すると「健康になること疑いない」と、どこもかしこも言い立てています。彼らは、飲め、食せ、この健康器具を使えということばかりを前に出して、売らんがためを優先しています。「病気にならないためには、どうしたらいいか」と聞いたところで、まともな答えは期待できません。
 病院にはカルテがあります。しかしあれはドイツ語で書かれていて(最近は日本語で書かれるようになった、という話も聞きます)よく分りませんし、医者の一種の記録書に過ぎません。薬歴も何も、ほぼその病院の狭い範囲のものに限られていて、自分を知る情報にすらなっていません。
 第一、町医者にせよ大病院にしろ、聞かれることは「どこが痛い?」「どこが変か?」ということに限られていて、もし「病気にならないためには、どうしたらいいか」と問いかけても、医師たちは戸惑うだけで返答に困るでしょう。なかには「この忙しいときに!」とか言って、こめかみに青筋を立てて怒声をあげる医師がいたりすることでしょう。
 国は「予防医学」をいいます。
 医療費の増加を考えると「予防医学」が求められているのはいうまでもありません。しかし、そんな現実はいまの日本にはないことを知った上で、それをほんとうに社会化するにはどうしたらいいか、まともに考えてほしいと思っています。

 医食同源(いしょくどうげん)という言葉があります。
 病気をなおすのも食事をするのも、生命を養い健康を保つためで、その本質は同じだという意味です。薬食帰一も同様の言葉です。
 この食療法は「予防医学」の先駆けで、戦国期の成立とされる《山海経(せんがいきよう)》に記載されています。酸、苦、甘、辛、鹹の五味の調和ある摂取によって、健康が保たれるとされます。
 予防医学的な発想は、別に東洋に限られたことでなく、ドイツなどでも盛んにやられてきたことで、こちらは「食」ではなく、「住」を早くから問題にしてきました。
予防医学のパイオニアとして知られるマックス・フォン・ベッテンコファーは、1800年代の中頃に室内空気質を問題にし、家を建てる際に、不純物質を含まない建材をちゃんと用いることを提案しました。
 人が一日に摂取する空気量は、15〜20kgに達するといいます。ドイツ人らしく、部屋にいて吸う空気そのものを彼は問題視しました。ドイツの「バウビオロギー住宅」は、そういう背景があって生まれたものです。
 予防医学を、「医」にだけ期待しないで、「食」でも「住」でもやることです。
 ブログで書いた静華さんは、医食同源を根本に置いているし、あさの葉さんは来店者とゆっくりと会話を交わしながら、その人に合ったやり方を大切にしています。
 町の工務店は、病気にならないための「家」を造ることです。
by sosakujo | 2006-10-16 07:24
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