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昨日(9月1日)、有楽町・東京国際フォーラムを会場にして「“木の家”耐震改修推進会議発会式」が開かれました。会場は定員オーバーとなり、熱気に溢れたものになりました。
管直人内閣総理大臣からメッセージがよせられ、超多忙のなか前原誠司国交大臣、皆川芳嗣林野庁長官に駆けつけていただき、ご挨拶いただきました。 この「発会式」に先だって、当初呼びかけ人会が開かれ、(以下、敬称略) 「“木の家”耐震改修推進会議議長に養老孟司、議長代理に天野礼子、事務局長に徳本茂(全建総連)、企画委員長に小池一三を選出し、運営委員として下記の方々が選ばれました。 青木宏之(社団法人全国中小建築工事業団体連合会会長) 梅野博之(全国森林組合連合会代表理事専務) 田村豪勇(全国建設労働組合総連合中央執行委員長) 並木瑛夫(社団法人全国木材組合連合会会長) 藤本昌也(社団法人日本建築士会連合会会長) 豆原義重(国産材製材協会会長) 養老孟司 (東京大学名誉教授/「”木の家づくり”から林業再生を考える委員会」委員長) 天野礼子 (作家/「”木の家づくり”から林業再生を考える委員会」委員長代理) 小池一三 (町の工務店ネット代表/「”木の家づくり”から林業再生を考える委員会」委員) わたしは、この発会式の準備に、茹だるような暑さのなか、この1か月奔走しました。 構想から開会まで、約1か月という超短期間の取り組みにかかわらず、呼びかけ人の方々は、このテーマが持つ重要性・緊急性を鑑み、着任いただけました。ありがとうございました。 この取り組みは、住宅・林業のナショナルセンター代表が一堂に会するという横断的なもので、画期的なものになったと思っています。推進会議は、今後、国民運動といえるものにすべく輪を広げ、また、「耐震」というと、建築構造の先生が中心になりますが、今回は学際的な広がりを持つ取り組みにしよう、ということになりました。 この発会式では、目黒公郎東大教授に講演いただきました。教授は、震災と言うと水とカンパン、仮設住宅などが問題になるが、阪神淡路大震災の犠牲者は、検死専門家の分析結果にしたがうと、実は地震勃発から14分以内に92%が亡くなっていて、それは建物の倒壊によるもので、最大の地震対策は「住宅の耐震化にある」と言いきられました。 講演時間は、予定をオーバーし、そのあとのパネルディスカッションは吹っ飛び、プログラムの立て方にムリがあり、反省を強いられましたが、教授の話を聞いていただいてよかったと思っています。 10月末に「推進会議」を開き、来年1月に神戸で「大勉強会」を開催します。 来週には神戸に入って、その準備にあたります。 今回の呼びかけ人会で決定され、発会式で、満場一致の拍手で賛同いただいた「呼びかけ人アピール」を、以下、添付します。 “木の家”耐震改修推進会議 9.1 呼びかけ人アピール 2010.9.1 於:東京有楽町・東京国際フォーラム 1.大地は不動ではない。大地は隆起沈降する。多様な景観を持ち、地形が複雑であればあるほど、この隆起沈降の現象は顕著なものとなる。日本列島は、山岳と河川、平野と盆地、入り江と湖水など変化に富んだ地形を持っており、地震による影響を受けやすい地域がある一方、過去の記録の上では少ない地域もある。けれども、過去のデータがないからといって、明日地震が起こらないという保証は何もない。 2.今後、M8クラスの巨大地震は30~50年の間に4~5回起こると予想され、M7クラス(兵庫県南部地震や首都圏直下型地震クラス)は、その数倍起こると予測されている。 3.阪神淡路大震災における死亡者の92%は、地震直後の14分間に起きた圧死・窒息死等によるものだった。この事実は、地震への根本対策が先ず何をおいても住宅の耐震化にあることを教えている。 4.政府によって発表された「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)は、住宅に関して「2020年までに非耐震化住宅を5%以内」とする目標を打ち出し、また林業再生に関して「木材自給率50%の達成」を掲げた。「新成長戦略」は別々の項目になってはいるが、この二つは不可分の関係にある。耐震改修には多量の木材が必要であり、その木材は、林業再生の「出口」となる。 5.本推進会議は、住宅耐震化を促進するため耐震改修に対する支援の充実を、政府と各自治体に要請する。と同時に、耐震化を手掛かりにして、省エネ化やバリアフリー、建物の劣化対策等を行う既存住宅の「本格改修」への流れを促したい。建築部位の補強を基本にしながら、さらに、今住む家を次世代(30~50年間)に引き継げるものにすることが、耐震化の意味と価値を高め、普及を促す力となる。 6.前項にいう「本格改修」を進めるためには、幾つかの課題が残されている。一つは検査・診断・評価法などの「制度整備」であり、今一つは、既存住宅改修・改造に対する長期・低金利の住宅ローンや補助金などの「制度支援」である。 よくいわれるように、新築された木造住宅は建築後10年目から毎年1割ずつ目減りし、20年でほぼゼロになる。資産価値ゼロのものを改修しても、新たな価値を生まないので保険や保証がつけられず、金融の対象にならない。最近では幾つかの試みがなされているものの、未だ本格的な制度となり得ていない。これらの「制度設計」は焦眉の課題である。 7.このことは、中古住宅の市場創出とも絡んでいる。市場全体のうち中古住宅が占め る割合は米国80%、英国90%を占めているが、日本は13%に留まっている。これを転換 するには、建物査定による価値評価の確立が必要とされる。それはまた、急激なまでに家 族の様態が変容するなか、住み続けてもよく、家族の事情に応じて処分もできる選択可能 な条件をかたちづくることになる。 8.“木の家”改修では、たくさんの木材が用いられる。それは林業再生の「出口」となり、それはまた「町」と「山」双方の雇用の保持・創出に寄与し、地域経済を活気づける。 9.本推進会議は、住宅(工務店・設計事務所)・林業(育林・伐採・製材・流通)関係団体代表者6名と、国交省「“木の家づくり”から林業再生を考える委員会」委員である養老孟司・天野礼子・小池一三3名の呼びかけにより、本日発会した。 活動内容は、提言・普及啓発・情報収集を行うことを主とし、耐震化推進の「旗振り」役を担うものである。今後、より横断的な広がりを得、また広範な人士の結集による学際的な取り組みにより、 “木の家”耐震改修推進を国民(地域)挙げての運動へと高めたい。 10.政府が掲げた「非耐震化住宅を5%以内」の目標は、地域の地道な取り組みを必要とし、地域の工務店・設計事務所・林業関係者が果たす役割がきわめて大きい。 地域ごとに「“木の家”耐震改修推進会議」を興し、その地域で過去に起こった地震記録、地形・地質・地盤などを克明に調べ、その街の「地域防災地図」を作成することを呼び掛けたい。また耐震に関する地域の支援制度の拡充を働きかけ、地域住民に向けては「声掛け運動」を起こし、診断と補強の「ローラー作戦」を展開することが、この運動を条件づける。地震防災力は「地域が自ら考え、地域が自ら動く」ことが基本である。 11.この趣旨に立ち、各地域及び団体等で耐震勉強会を開くことを呼び掛ける。地震科学と耐震技術は日々進歩しており、実際的な実践事例も各地にみられる。相互に学び、学び合い、情報力を高めることが、今日ほど求められている時はない。 この運動を盛大なものとするため、本推進会議は「大勉強会(仮称)」の計画を立て、その初回期日を、阪神淡路大震災の記念日にあたる2011年1月17日に予定する。 予定される「大勉強会」は、地震実態と地震科学への認識を深め、各地域による取り組みの情報化、耐震改修の方法理解、具体技術の習得等に役立つものとしたい。そして、各地の「町」と「山」の活動メンバーが一堂に会し、相互交流を深める場としたい。 12.迫りくる地震対策の一番に住宅の耐震化が挙げられ、その遅れが破壊的な災害を惹き起し、多大な経済負担を強いるのは目に見えている。より抜本的な政策が求められると共に、一人一人の国民が、「よし耐震改修しよう」「これを機会に住まいを“本格改修”しよう」という行動をいかに呼べるかが、この運動の成否を決定づける。 報道機関には、いたずらに恐怖を与えることなく、しかし、地震によって起こるであろう事態を正確に伝え、想像力を喚起させ、住宅耐震化の重要性を広く知らせてほしい。 13.以上にみた取り組みを推進するため、呼びかけ人9名の名において、ここに“木の家”耐震改修推進をアピールするものである。 本推進会議発会の日である9月1日は、87年前(1923年)に起こった関東大震災を忘れないための「防災の日」である。 ――「過去の記録はまた将来の予言となる(寺田寅彦)」
by sosakujo
| 2010-09-02 07:06
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